2018年に第3次AIブームが到来したせいで、どこの会社でも「AIを入れろ!」「AIを入れろ!」と何もわからない上司に無茶ぶりされている人は多いのではないでしょうか。
かく言う私もそうでした。
私はAIのことが何もわからなかったので、いつも取引があるソフトウェア会社に相談したところ、チャットボットの導入を進められました。
しかし、チャットボットの開発方法や運用方法を調査していくうちに、チャットボットの導入を断念するという結論に至りました。
というわけで、今回はチャットボットって何?から、チャットボットで本当に業務が効率化できるのか?ということをまとめていきます。
目次
チャットボットって何?

チャットボットとは簡単に言うと、質問をテキストで入力すると自動でその質問に答えてくれる機械のことです。百聞は一見に如かずということで、実際のチャットボットを見てみましょう。
サンプルで「送料」と入力しておりますが、その質問に対して自動で答えを返してくれています。その他にも例えば「支払い方法は?」と入力すればそれに該当した回答を返してくれます。
これだけ見ると「おおお!自動で問い合わせに対応してくれるので、すげー業務の効率化じゃん」と思われるかもしれませんが、そこに落とし穴が…
チャットボットの落とし穴

チャットボットは良い事ずくめに感じるかもしれません。しかし、どのような会社にもマッチする代物ではないのです。その理由は以下の通りです。
星の数ほどのQ&Aを作る必要がある
まず、現在普及しているチャットボットは基本的に自動で回答を学習していきません。(ゴリゴリに開発していけば可能ですが…)
どういうことかと言うと、想定質問とその回答をずっとメンテナンスしていく人が必要と言うことです。
しかも、質問の仕方は人それぞれ…
先ほどの大塚商会様のチャットボットで「配送方法」と入力するとちゃんと回答が出てきます。しかし、「送り方」と入力すると回答が出てこないのです。要するに、「送り方」という質問に対する答えがデータベースに無いのです。
「じゃあ、”送り方”に対する答えを用意してあげればいいじゃん」
と思われるかもしれませんが、それは星の数ほどある言い回しのすべてに答えを用意してあげないといけないということです。それをすることは果たして業務の効率化と言えるのでしょうか?
実際に家電メーカーのお客様対応用のチャットボットを開発した人に聞いた話だと、「リモコン」というワードだけでも、約30種類の言い回しをデータベースに登録したそうです。(そうですよね、私の母もリモコンのことを「チャンネル」っていったり、「ピッピ」って言ってますもん…)
しかも、その人曰く、「リモコン」のことを「リモコン」と言える人はチャットボットなど使用しないで自分で解決策を見つけられる人で、チャットボットを利用する人は「リモコン」のことを「リモコン」と言えない層とのこと…これは骨が折れますわ
欲しい回答を出せないと利用者が減っていく
次に、ユーザーがチャットボットで質問をした際に、欲しい回答が出てこなかった場合、ユーザーはそのチャットボットを根気よく使い続けると思いますか?
ユーザーは一度使えない認定をすると二度とそのシステムを利用してくれなくなります。
実際に、チャットボットを導入している会社に話を聞く機会がありましたが、利用ユーザーは時間が経つごとに減っていったとのことです。
次第にチャットボットは見向きもされなくなり、メンテナンスはおろそかになっていき、結局電話での問い合わせ件数は以前とかわらないままとのこと…
現実的にどんな回答にも完璧に答えられるチャットボットを作ることは難しく、欲しい回答を出せないチャットボットは誰からも見向きされなくなる
AIエンジニアに聞いたチャットボットの現実

私が現在やり取りをしているAIエンジニアの方は、世界的な家電メーカーのカスタマーセンター用のチャットボットや某メガバンクのコールセンター用のチャットボットの開発に携わっている最前線の方です。
その方に聞いたチャットボットの現実は以下の通り。
チャットボットもどきを売ろうとする会社に注意
AIのことについて詳しい人はまだまだ少ないと思います。そこで、各会社の担当は藁にもすがる思いでソフトウェア会社などに相談をするケースが多いと思います。
そこにつけこんで、大した技術も無い会社やエンジニアがAIと称してチャットボットもどきや、なんちゃって画像認識をオススメするケースが非常に多いらしいです。
実際に私も初めてチャットボットを見た時、何も考えずにものすごい勢いで食いついてしまいました…
しかし、所詮はもどきやなんちゃってなので、使い物になりません。
AIに関しては信頼できる会社やエンジニアに相談することをオススメ
チャットボットはみんなで育てていくという認識が必要
チャットボットはQ&Aのデータベースが充実していくにしたがい、使えるものとなっていきます。
なので、今までのソフトウェアのように、導入当時からほぼ完成!という認識は捨てて、チャットボットを育てていくという認識がユーザーにもメンテナンスする人にも必要ということです。
チャットボットは人間と一緒で徐々に成長していくという認識が必要
質問件数が多くないと活きない
当たり前の話ですが、質問件数がある程度のボリュームがないと、チャットボットの費用対効果は上がりません。
上で紹介したように、チャットボットのメンテナンスは多大な労力を必要とします。その労力に見合った利用数がないと、ただの自己満足で終了してしまいます。
私がチャットボットの導入を断念した理由はここにありました。
私は社内から問い合わせの多い人達のためにチャットボットの導入を検討しておりましたが、その問い合わせ件数は多くても月に100件程。多大な労力をかけてチャットボットを導入しても、最大でこの100件の問い合わせが無くなるだけです。
チャットボットのメンテナンスにはその100件以上の労力がかかることは目に見えていたので、導入を断念しました。
逆に言えば、膨大な問い合わせ件数に対してはチャットボットはパフォーマンスを上げることが可能
最初はユーザーに直接利用させない運用
この運用方法はチャットボットの導入を検討している方にオススメです。
どういうことかと言うと、チャットボットを最初からユーザーに公開するのではなく、いつも問い合わせを受けている人が問い合わせ内容をチャットボットに入力(もしくはデータベースに入力)して、ある程度使い物になるようになったら、ユーザーに公開するという方法です。
こうすることにより、ある程度完成したチャットボットを公開することが可能になり、ユーザーのチャットボット離れを防ぐことができます。また、そのチャットボットさえあれば、専門的な知識が無くても問い合わせ対応ができるようになります。
導入当初はチャットボットとユーザーの間に担当が入る
まとめ
チャットボットのデメリットっぽいことばかり書いてきましたが、しっかりとしたメンテナンスとそれなりの問い合わせボリュームがあればチャットボットは業務効率化の力強い味方となってくれます。
ただ、AIブームに乗じて、エンジニアの言うままにチャットボットを導入しようとしている人は注意が必要です。
なので、今回紹介したチャットボットの落とし穴を意識しつつ、導入の検討をすることをオススメします。